時事その他についての考察

思考実験です。国の形は変わっていきます

前の記事で信長とシーザーについて少し触れました。共に国をその時代にあった形に変えるという大事業をなしたあとに既存の勢力の反発で非業の死を遂げるという生涯を送った英傑です。考えてみれば、中国も秦によって初めて統一されたあと、始皇帝が亡くなったあとに一度また分裂しています。これも統一以前の勢力の抵抗といえるでしょう。

国をまとめるというのは一大事業だということがわかります。そう思うと、いま、当たり前にある国々もいまのままで今後も続く可能性は極めて低いと言わざるをえません。

どうなるのか?などということの正確な答えなどはわかるはずもありませんが、限られた知識と知能のなかで思考実験をしてみようという試みです。

歴史を振り返ると、初めは小さな国が乱立していたのはいわば当たり前の現象ですが、広大な帝国が世界の大きな部分を支配する時代がそれに続きました。特に世界の中心を占める地域でそれが起きたのが特徴です。

長らく世界は中東を中心として西にエジプト、東は今のイランあたりまでと、東アジアの中国が繁栄の中心であり、まさにそこに帝国が築かれました。帝国を作り上げ、さらに維持するには莫大な富が必要なので、それがある所にできたのは当たり前といえばそうです。

《一番有名なローマ帝国がこれに当てはまらない例外なのは少し困ります。ローマの場合は辺境の国が軍事力で豊かな地域を支配してその富を統治に使うという、モンゴル帝国と同じパターンです》

さて、今も帝国の直接の継承者といえる国があります。ロシア、中国、インドです。ロシアと中国が強権的な国家であるのは、近代国家に見せ掛けて中身は帝国なので当然のことですし、そもそもあれだけの広大な土地と膨大な人口をまとめるには強権的な手法しかないのでしょう。個人の権利意識が高まっている現代において、そのやり方で今後もやっていけるのか?ロシア、中国は不安定であり、危険です。周りの国々は目先の経済力、軍事力に惑わされず、突然崩壊する危険性も考えておかなくてはいけません。

インドはどうなのだ、といえば、民主主義の形態を保っていられるのは、イギリス統治時代が長く、その間に民主主義での統治が可能になるだけの基礎が整えられたからでしょう。しかし、その統治形態は民主主義のなかでは強権的であり、また、さらなる人口の増加が予想されているので、安定した統治形態が続く保証はやはりありません。

さて、そもそも何故帝国はほとんど無くなってしまったのでしょう。経済と軍事を一手に握っていて、磐石といってもよかった帝国が衰退した理由は、個々人の力が強まってきたからではないでしょうか。

帝国は経済を握っているといいました。しかし、経済が発展するためには個々人が力を発揮することが必要です。世の中に経済の発展というものがなければ帝国はいまだに続いているかもしれません。

《日本や同時代の東アジアの他の国がやった鎖国政策をとれればそれも可能だったでしょうが、そんなことをすれば、その間に他国は経済を発展させて 軍事力もつけ、存在をおびやかしにくるでしょうから中東その他、そもそも他の地域との交流を切ることのできない地域ではこれは無理です。海に囲まれた日本だけでなく、他の地域と地続きの中国(明朝)でも鎖国ができたのは、東アジアは強力な国々から遠く離れていて直接の脅威を受けなかったからです》

経済が発展するということは、統治階級以外の人達の中にも力を持つ人達が出てくるということです。支配階級以外が力を持ってきた結果、ほとんどの力を支配階級がもつことによって統治していた帝国が崩壊するのは当然といえます。

これは国の形がその時の社会状況によって変わるものだということの一つの例です。

今の世界はほとんどフランス革命によって生まれた国民国家によってできています。(フランス革命と国民国家《ネーション・ステート》の関係についてご存知ない向きは各種著作を参考にして下さい。 わたくしは柄谷行人さんの多分、「世界共和国へ」で教えてもらいました。ついでですが柄谷さんの「世界史の構造」は読むべき本です)

国民国家は今後、どのような形になるのか?もしくはまだまだこのまま続くのか。

一昔前、インターネットが確立したときに、国境は無意味になるのではないか、という話が聞かれました。しかしとりあえずはまだ国家は磐石なように見えます。しかし、その時の問題提起が的外れだったわけではないでしょう。以下に国家の存在意義をおびやかしそうなものをあげていきます。

①インターネット環境の普及によって、情報の壁が大変に低くなった

②GAFA(でいいんでしたっけ)などインターネットに依った巨大企業が税収の仕組みを揺るがしている。

③無意味とも思える法人税の引き下げ競争がある。

④地球規模の気候変動はルール作りという国家の独占権力の一部を国際機関に渡さざるを得ない状況を作っている。

⑤AI とロボットの発達は今あるほとんどの労働を無意味にする。

⑥デジタル通貨の出現

一つ一つ切離して考えていきます。

① 個々人の持てる情報が質、量ともに増えた。これは国民の力が強くなり、民主化が進み、国家の役割、権力が少なくなっていく方向を強める。

個々人の情報を企業、国家が細部まで把握できることになる。これは国家による管理を強め、国家権力を増す方向に行く力を強める。

このように、真逆の力を双方共に与えることになります。こういう場合、もともとの力が強い方にひきずられがちです。さらに、ネットがあるとしても個々人は非常にまとまりづらいが、国家権力はもともとまとまっています。従って、これは国家統制が強まることになりうる要因といえます。

②と③ 法人税をとる仕組みが変わるのではないか。国単位ではなく、国際機関がこれを徴収して各国に分配する仕組みが確立する可能性があります。もしそうなれば、国家の権力の一部が明け渡されると共に、国連以上の強力な国際機関が生まれることになります。さらに、仮に、世界が冷戦の時のようにブロック化していたら、その機関は一つだけではないことになります。

④ も全く同じ構造です。この場合はエネルギー政策を超国家機関が決めることになるだけではなく、極端にいえば配給制度のようなものになる可能性が全くないわけではありません。問題の切実の度合いによって私たちのとるべき手段も変わっていきます。ブロック化の可能性も②、③と同じです。

⑤ ロボットの発達により、人間が担当する仕事の種類は変わっていきます。これは一時的な失業率の上昇など国を揺るがす変化になりうりますが、今までも経験してきた種類の変化なので、直接、国家の形が変わるようなことが起きるわけではないでしょう。

АΙについては後で触れることにします。

⑥ これもまた、国家の持っている重要な力の源の一つである、独占的な通貨発行権をおびやかす試みです。デジタル通貨に関してはその投機的な特徴が注目されがちですが、勿論、その本質はそこにはありません。

今は私たちが世界各国で商売をするまたは買い物をするにあたって、それぞれの国で、円だのドルだのユーロだのと別々のお金を使わなければいけない、つまり、いちいち交換しなければいけません。これによる余計な労力を無くするという機能が一つ。

さらにいわいる為替リスク、つまり、例えば今まで100円で1ドルと交換できていたところが、突然110円で1ドルとか逆に90円で1ドルとかこちらの都合とは関係なく変わってしまうのでは安心して国際的な商売はできないわけで、その心配をなくす、というもう1つの重大な機能を持っているわけです。

今のところデジタル通貨は成功しているとは言い難いですが、方向性と可能性ははっきりと示したので、必ず、一般的なものになるでしょう。できてしまったものをなかったことには出来ません。

今までの検討をまとめると現在、国家が持っている機能、権限の相当部分が超国家機関に移され、通貨さえ、その手を離れるかもしれない未来が見えてきます。但し、国家の潜在能力は巨大です。③で申しました法人税の引き下げ競争はいつの間にかなくなっています。誰かが何かをやったのでしょう。

しかしながら各国共に国内では管理が強まる、つまり、国の力が強まりそうです。なんというか、“遊び”がなくなる感じです。

国がその権限の一部を上級の国際機関に移している前例は既にあります。勿論、EUのことです。やはりヨーロッパはいまだに世界をリードする存在です。

もしも本当に世界がそういった方向に向かうとしたらEUでの経験が大きく役立つでしょう。

(国際連合やWTOなどは今言っていることとは全く別ものです。これらは完全な権限を持っている国々が集まっているものです)

以上、随分無茶なことを書いたようです。上に述べたことが全くの的外れなことか、一部でも予測通りになるのかはわかりませんが、いずれにしても今のままというわけにはいきそうにありません。

その変化が厳しいものになるか、望ましいものになるのかは私たち一人一人にかかっているでしょう。

偉そうで利いた風なことをいわせて頂くと、大切なのは物事を他人事とは思わないことと、他人の立場になって考えることです。ジョン・レノンの「イマジン」でいうと、ぼくたちにできるかな?という感じですが。

最後にАΙについてなのですが、これは今まで述べてきたこととは次元の違う問題です。ですので項をあらためて考えてみたいと思います。

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