それは、中国に代表される覇権主義国家に、付け入る隙を与えてしまうことである。
アメリカの企業といっても、実際は巨大IT企業の占める割合が大きいのだろう。どちらにしろ、これだけ見るとまるで第二次世界大戦の直後のように世界中の富がアメリカに集まっているようだ。
しかし、アメリカの実際は“繁栄”という言葉からは程遠い。
それは、最早国家と企業は相当に乖離しているからである。多国籍企業は本社のある国だけに税金を払うわけではない。
それに、雇用も全世界的に行っている。その信憑性に関しては不明ながら、巨大IT企業のトップに立つ人は、納める税金が極端に低いという話もある。既に国家権力の範疇に収まらない存在になっている。
かつて、穀物メジャー、石油メジャーといった存在がやはり国家を越える存在になるのではないか、と懸念される時代があった。
(それらが現在どの位の権力基盤を持っているのか、国家はそれらを押さえ込むのに成功したのかなどは浅学にして知らない。しかし、それは現在の課題にも参考になることなのかもしれない)
いずれにしろ、当時と今では世界的な経済の結びつきが大きく違うので、巨大企業の規模や力も相当に異なっていることだろう。
中国の覇権主義、強権主義は、こういう民主主義国家の欠点を反面教師としている一面がある。少なくとも、そういう宣伝はできる。そうして、それには一定の説得力がある。
中国のようなやり方は、人々の意欲、自主性を奪うので、長い目で見れば衰退する方法だと思う。
しかし、ソビエト連邦やナチスドイツの例を見ればわかるが、短期的には成果の出やすい政体だ。
また、民主主義国家が必ず勝利するものでもない。(古代ギリシャのペロポネソス戦争では最終的にアテネはスパルタに敗北した)
民主主義国家としては、覇権主義国家に付け入れられる弱点は克服しなければならない。
そのためには、極端な格差、また地球規模の問題に対して統一した政策を決めることが出来ない、などといった課題は解決されなければならないのである。