大谷選手の活躍と、その異常さは今更言うまでもないだろう。
大谷選手が空前の存在であることは確かだろう。
しかし、これ以降は現れない存在かというと、そうではないかも知れない。
何故、大谷選手がこれほどの活躍ができるのかというと、本人の持って生まれた才能と努力の故というのは勿論だけど、その方法論、努力の方向性によることも大きい。
例えば、かつて桑田真澄投手は球速を上げるために筋力をつけたことがある。その結果、確かに球は速くなったのだが、何故か以前より成績は悪くなった。解説者やスポーツ雑誌によると、それは球のいわいる“切れ”と呼ばれるものが無くなったからだということだった。
競技は違うが、サッカーの三浦知良選手も屈強な外国人選手に当たり負けしないように筋力をつけたことがある。フランスワールドカップのアジア予選の頃だ。しかし、身体が強くなったのと引き換えに一瞬の動きのスピードが落ちてしまった。また、報道によれば、更には厳しいマークの結果、相手選手からの当たりで怪我を負ってしまったこともあり、予選も第二戦以降、精彩を欠くことになってしまった。
大谷選手も桑田真澄投手や三浦選手と同じく、トレーニングによって大きな筋力をつけている。しかしそれによってそのプレーから切れが失われることはない。
それが具体的にどういう理屈に基づくものかはわからないが、これは筋力トレーニングの方法論が進歩したことによるものだろう。
また、勿論、栄養学や睡眠に関する理論、また寝具の進化などなど、大谷選手を支える様々な科学の進歩がある。
その結果として大谷翔平という存在がある。そうであれば、大谷選手以降のプレーヤーは、その方法を真似することができる。勿論、個々の選手によって適した方法は違うだろうが、大きな方向は同じだろう。
大谷選手の才能は勿論素晴らしいものだろう。しかしそれは空前のものではないだろうし、絶後でもないだろう。
例えば良く引き合いにだされるベーブ・ルースが大谷選手と同じ科学的知見を持っていれば投打でもっと活躍したことだろう。
特にスポーツでよくあることだが、誰かが壁を破った時に、それまで極めて困難だと思われていたその壁を、後続の選手が次々とぶち破ることがある。
大谷翔平というのは、もしかしたらそういう存在になるのかもしれない。
※ただ、唯一、生活の、人生のすべてを野球に集中させる行為、それができる性格や意志は真似するのは難しい。こればかりは現代科学を持ってしても解明出来ない秘密だろう。