少し前に、現代の青年がバブル期の日本にタイムスリップするというドラマをやっていた。
その中で彼は成功を夢見る青年と知り合い、友達になる。そうして、未来を知る者の強みとして、まだ発表されていない「世界に一つだけの花」を教え、絶対にヒットするはずだからこれをレコード会社に売り込めとアドバイスする。
しかし、友達はその曲の辛気臭さに呆れる。そんなものが売れるわけがないという。そうして、歌う青年を制して当時大ヒットしていたプリンセス プリンセスの「ダイアモンド」のレコードをかける。
この設定で、この二つの曲を選んだのは流石に上手い。
曲調は、「ダイアモンド」は跳ねるリズムで聴くものを鼓舞するメロディであるのに対して、「世界に一つだけの花」は落ち着いた、心に訴えかけるメロディだ。
歌詞は更に象徴的で、前者は自分を信じて快楽や目標に突き進めというメッセージであるのに対して、後者は今あるままが充分であり、素晴らしいのだ、という歌だ。
これは勿論、どちらの価値観が正しいとか、そういう話ではない。
生物は環境に適応するというのは常識的な進化論だが、これは、身体だけに当てはまるのではく、精神にも適応されるということだ。
社会が成長している時には、その成長を加速させる人材が求められる。
対して社会が停滞しており、将来の希望が持ちにくい、そんなものを持ってしまったら現実との落差に参ってしまうような時は現状に甘んじることが正しいという思想が一般的になる。
そうしないと、社会が絶望して人生に対するやる気を失った人で溢れて更に活力がなくなってしまう。そうすると、停滞から衰退に向かうことになりかねない。
面白いのは、この変化は誰かが画策したものではなく、自然に起きたものであるということだ。
我々が正しいと思っていること、当然と思っていることなども、環境がそうさせているに過ぎないことが多いのだろう。