格好づけもあろうが、そればかりではない。
経済学の言葉に「信用の内在的不安定性」というものがあるそうだ。こんな言葉は普通の人はパッと見ただけでは意味がわかるまい。二度、三度読んで、「ああ、どうやら、信用というものはもともと壊れやすいものだ」ということを言っているらしい、とわかるだろう。
これは英語からの直訳のようなもので、英語では「inherent instability of credit」と言うのだそうだ。
インヘレントやインスタビリティの正確な訳は知らないが、日本語訳から判断してそれぞれ内在と不安定という意味があるのだろう。
さて、英語圏の人は「インヘレント云々」を聞いて、(単語の意味を知っていれば)すぐにその意味を理解できるのではなかろうか。
というよりも、我々日本人だって、もしもこの言葉をよく使う環境にいるならば、日本語で理解し、表現するよりも英語で理解しちゃったほうが自然に頭に入るのではないか。
まあ、それが格好づけだけではない、彼らのカタカナ語乱用の理由ではあるのだが、さて、ここまで考えたならば、根本的な間違いに気付くのではないか。
そう、初めに言ったように、この言葉を普通に「信用とはもともと壊れやすいもの」と言えばいいのだ。
(日本語にするとどうしても“切れ”がないので印象付けには向かないが)
一見、難しそうに見える本も、そのように訳せばもっと多くの人が楽に理解できるのだろうが。