まずは、それのどこが悪いのか、ということがあります。しかし、この話は面倒なので、とりあえず、それは脅威だということにしておきます。
脅威であるからにには、官民あげてそれに備えなければならないことではあります。それは前提としてあるのですが、少し冷静に考えてみたいのです。
国の指導層が独裁的な力を持つ、専制的な国家では短い期間であれば、周りの国々が驚く結果を出すことがあります。
ナチスドイツは、政権をとった初めの頃は、経済の回復で目覚ましい成果をあげました。自由主義と言われている国のなかでも、その統治方法を誉めそやす言説が多く見られたと聞きます。ファシズムは初めから忌み嫌われていたわけではないのです。
ソビエト連邦も、集団農場などが大きな成功を納めたと初めは言われていました。極めつけは1961年にユーリイ・ガガーリン小佐が宇宙にいったことです。
宇宙開発は、先端技術の粋であると考えられていたので、その分野で大きく差をつけられているということは、他の多くの分野でも同じことが起きているのかも知れないと考えられたのです。まさに、今の中国がデジタル技術で見せつけようとしているのと同じです。
ナチスドイツは敗戦で無くなってしまったので、もしも存続していたらどうなったのかはわからなくなってしまいました。では、ソ連はその後どうなったのでしょうか。
その権威主義的な統治体制の欠点がだんだんと現れて、様々な分野でアメリカは勿論、他の民主主義の国々に敵わなくなり、ついには自壊してしまいました。
国家レベルだと対象が大きすぎてわかりにくくなってしまいます。しかし、これを会社や、会社のなかの一部門、もしくは学校の部活動などで考えてみたらどうでしょう。
上からの権威を笠に着て、無理矢理、許容範囲を遥かに越えたことをやらされても、初めはなんとか結果を出すことが出来るかもしれません。そうして、それは一見目覚ましいものであるのかも知れません。しかし、気力、体力、能力を越えた仕事が長続きするわけはありません。すぐに行き詰まって、すべての成果は無駄になることでしょう。
今、中国がやっていることは、そういう古典的な失敗をなぞっているものであるとしか見えません。
こういう、万人に見えることを、何故優秀な筈の国家指導者がくり返しやってしまうのかはなかなか興味を引くことです。結局、人間の持つ学習能力などは限られたものであるということかもしれません。
《勿論、中国がそういった専制国家の 呪縛を逃れてその力を伸ばし続ける可能性がないわけではありません。しかし、今のところは、成長した企業を強引に押さえつけようとするという話を聞いても、正にその呪縛通りの経過を辿っているようにか見えません》
いずれにしろ、短期的には中国の勢いは無視できないものであるので、対策をとる必要はあるでしょうが、先を見越して冷静に対処することが大切です。
このままでは、中国に世界が飲み込まれてしまうなどという言説などは、話四分の一 位に聞いていればいいでしょう。
それよりも、迷走してしまってしる民主主義国家を立て直すほうがより、重要です。勿論世界はつながっているので、それは対中国戦略とも密接に関係することなのですが。