SNSの投稿などを拝見すると、接客業の方々が苦労されている様子が散見されます。確かに、横柄だったり、理不尽なことを言うお客は多いようです。
その人たちが勘違いをしてしまっていることの一つは、有名な“お客様は神様です”という言葉の解釈です。
これは、本当は単純に、どのお店を選ぶか、そこで何を買うのかというのは、お客の専権事項であって、何人も命令できない、ということを言ったに過ぎないのです。
その意味において、絶対権力者なので、神になぞらえることが出来るのです。
だからこそ、店側としては、お客に気に入られるように振る舞うのですが、その振る舞いの程度を決めるのは、これは店側が決めることで、何人も命令することは出来ません。ただ、それに失敗したら、淘汰されるだけです。
それを勘違いして、お客はお客であるだけで偉いのだと思ってしまった人たちが、お店や他のお客に迷惑をかけたりするわけです。
彼らはそれで、歪んだ欲望を解消しているのかもしれません。それはそれなりに、気分のいいことなのかもしれません。しかし彼らは知らないのです。お店との付き合いで、もっと気分のいいことがあることを。
感じのいいお客は沢山いらっしゃいます。それは勿論、素晴らしいことです。でも、それだけでは普通の、いいお客さんです。
もう一歩踏み込んで、お店の人たちに感謝されるには、相手がして欲しいことをすることです。
なに、大層なことではないのです。相手の身になって、やってもらえたら助かるだろうことをすればいいだけです。
ただ、そうはいっても、難しいことは難しいのかもしれません。相手のして欲しいことに気付くには、ある程度の修業が必要ですから。
例えば、スーパーマーケットのレジで、すぐに支払いが出来るように、あらかじめ大体の金額を予測して用意しておくとか、居酒屋で注文したものが来たときに、テーブルが既に一杯だったら、さっと受け取ってあげるとか。(新しい品をおける場所をつくってあげる人は沢山いるでしょう。でも、場所は受け取ってからこっちでつくればいいだけで、店員さんとしては、その時間、待たされるより、直ぐに受け取ってもらったほうがいいに決まってます)
そういう、口幅ったいですが、気のきいたことをすると、大抵の店員さんは感謝の気持ちを表情に出してくれます。
その顔が見られるのって、結構、嬉しいものです。態度の悪いお客というのは、そういう気持ちを味わったことが無いのでしょう。
《但し、くり返しますが、これは意外に高等な技です。気をつかっているつもりで、実は余計なことだったり、迷惑なことだったりすることをしてしまうというのは、結構あります。例をあげるならば、やはり居酒屋などで、勘定を命じたあと、店員が支払ってくれるのを横で待っているのに、お皿を片付けたり、テーブルをおしぼりで拭いたりするとか。
まあ、自分が相手側だったら、という想像力を適切に働かさせられるかどうか、という問題なのですが。
ところで、最近の子育て理論では、人に感謝を示すと感謝が返ってくることを教えることが流行っているような気がします。
これは、とても素晴らしいことだと思います。あとは、それが通用する世の中が永く続いてくれればいいのですが。