時事その他についての考察

自らの分際を忘れないこと

いきなり大きなことから入りますが、徳川家康に有名な逸話があります。若き日に三方ヶ原の戦いで、急死する直前の武田信玄に大敗した時、全く文字の通りに命からがら浜松城に逃げかえった姿を、逸話では恐怖のため糞尿も垂れ流していたというその姿を、絵に描かせて生涯自らを戒めるもととしたというものです。

ひるがえって、我々はどうでしょう。小さい時から間違ったことは一つたりともいったこと、やったことはない、などという人はいないと思います。公になったかどうかは別に、大失敗、大失態をしたことはあるはずです。それを心の何処かに自らへの戒めとして留めておくことは大変、重要なことだと思います。それがあれば、他人を批判する時にも自らを絶対視するような傲慢ないい方にはならないはずですから。(作戦上、演技でそういう態度をとるのはまた、別の話ですが)

ところで、徳川家康に戻りますが、徳川家康という人は大変に小心な人でちょっとしたことで大袈裟なくらい驚いたり、小さなことですぐに狼狽えた、といわれています。(但し、そこから立ち直って一度態度を決めたらあとはびくともしなかった、ともいわれているそうですが)

勝負の世界には勝負師、と呼ばれる人たちがいます。普通に考えてしまったら、彼らは豪胆で、騒いだり狼狽えたりすることが無いように思ってしまいがちですが、勿論、そんなことではなく、彼らは例外なく、小心な人たちだといわれています。小心だからこそ、あらゆる可能性、不測の事態といわれることが起こることを考えつくして、そのすべてに対応する作戦、心構えができているので、他の人には不測と思われる事がおきたときにも涼しい顔をしていられるというのが本当のところでしょう。

確かに予想していなかったトラブルが起こったときにも平然と指示を出せる人は頼もしいだろうし、人間も大きくみえるでしょう。ベテラン、といわれる人がそうできるのは今までに似た経験をしたことがあるからでしょう。それをレベル1とすると、レベル2になると、過去に似た経験はなくとも、トラブルを乗り越えたという経験はあるので、対処法の基本がわかっており(まずは落ち着き、他人も落ち着かせる、とか、優先順位を決めるとか)なんとか対応できます。

しかし、徳川家康の例でわかるように、すぐに狼狽えたり、顔色を失ってしまう人が必ずしもリーダーの器がないわけではありません。直に立ち直ってリーダーシップを発揮する人もいるでしょうし、(そういえばマンガ「ワンピース」での赤髪のシャンクスやモンキー・D・ルフィはそういう風に描かれています)部下の中から参謀役をすぐに見つけてその意見を全面的に採用する度量があれば、そうして責任はとる覚悟がとれれば、それは 充分にリーダーの資質がある、といえるでしょう。

以上、自分を過信してはいけない、ということと、他人の評価は早まってはいけない、の二点でした。

追記。徳川家康はその晩年には狼狽えることがなくなったともいわれています。それと同時に人物も凡庸になってしまった、といったのは坂口安吾だったか。

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