日本経済の凋落が指摘されて久しいです。国としてのGDPは世界第三位を維持しているものの、一人あたりのそれは今は26位とかそんなものらしいです。バブル経済絶頂期の1988年は一人あたりでも二位だったらしいので、まあまあ、落ち込んでます。すなわち、経済で見る限り、日本は既に二流国だということらしいです。
では、技術はどうか?これはいまはまだ持ちこたえているようにも見えますが、トップとはいえなくなるのも時間の問題でしょう。この間までは最先端だったというより、独壇場だったロボット技術も、もうアメリカには到底かないません。かけられるお金が違いすぎるからです。お金でいうと、基礎研究も先細りするだろうといわれていますが、これも単にお金の問題です。基礎研究をおなざりにしているというより、それにお金をかけるだけの余裕がもうないのです。
そうして、日本人は一度豊かさを経験してしまつたので、国民性は変わってしまっています。もう、必死に努力して諸外国に対抗する、という気構えはもつことはできないでしょう。
悪い面だけ見てきました。では、最近、識者と言われる人たちがあおるように日本は駄目な国になっていまうことが避けられないのでしょうか。そんなことはない、と申しておきます。国の魅力や価値は経済だけで決まるのではないからです。
いい例がヨーロッパの国々です。彼らは経済の面から見れば既に世界をリードする地位から転落してもいいくらいですが、現実にはまだまだ大きな影響力を持ち続けています。例えばイギリスの外交、情報収集、分析能力。フランスやイタリアの文化やライフスタイルを提示する力。また、西ヨーロッパ全体として、システムを作り上げ、そこに君臨するテクニックはいまだ群を抜いています。(国際連合やIOCなどなど、悪い言い方をすれば、好き放題、我が物顔です)
《わたしは特別詳しいわけではありませんが、特にイタリアは面白いです。かの国の最大の利点は一般には否定される国民性なのではないでしょうか。おおらかな恋愛感に象徴されるように、人生を楽しむ技にたけています。もっと評価されていいのは、現代にあっても家族の繋がりが深いという、前近代の利点を持ち続けているところです。これは日本は勿論、先進国といわれている国々はその価値もしらずに弊履の如くに捨て去ってしまったものです。先進国ではイタリアぐらいでしょう、大切に持ち続けているのは。何故そんなことが出来たのか、なぞです。韓国や中国その他の国々は同じ失敗をしないようにしてほしいです。こういうのは周り回って他国の為にもなりますので》
日本は何を持っているでしょうか。外交はかなりの不得手です。日本は国内にひきこもり外交を遮断するか、他国のあとを無批判にくっついていくしかほとんどやったことがありません。たまに一時的な国力の上昇に調子づくと、秀吉の朝鮮出兵とか、近代でのシベリア出兵以降、太平洋戦争までのように失敗します。(無様なくらいに)こういうのは国柄であって、短期間に直ることではないようです。
文化は高度なものがありますが、それをお金にすることは不得手です。おもてなしの精神は結構ですが、高度なサービスを提供したのならば、それに見合った対価をもらわなければいけません。日本の誇るべき丁寧で正確な仕事は、それに見合った対価をもらわなければ、昨今いわれている日本の生産性の低さの原因と結論づけられてしまいます。
(一つ不思議なのですが、生産性向上はIT機器を利用することや、自宅勤務など、勤務形態の改善でいわれることが多いです。一方、食品などの過剰包装は資源を大切にする、といった観点から語られます。丁寧な接待技術やその心は賞賛されるのみです。この三つを結びつけた話はわたしは聞いたことがありません。早い話が生産性などというものは不用なものを省いたり、手を抜けばばそこそこあがるでしょう)
確かに、手間を惜しまない、という国民性は大きな利点です。西洋では一般に、仕事は苦痛で耐え忍ばなければいけないもの、それに対して、余暇、レジャーなど、私生活こそが生きる目的、と、ざっくりですが捉えられているようです。しかし、本当はそんなことなないはずです。と、いうよりも、仕事というのは、本来、楽しいものの筈なのです。日本人も西洋に影響されて仕事は苦痛なものと思い込んでいるきらいがありますが、この価値観を日本人がもともと持っていたものに戻すことができたら、そうして、それに諸外国も頷けるような説得力を持たせることができれば、その人生観は大いなる強みになります。
あとはなにがありますか。本当はこういうことは 外部の人の客観的な見方が有効なので、私たち日本人ではなく、外国人に日本のよさを聞いたほうがいいのかも知れません。最近のテレビでの日本賞賛ブームとでもいえる各番組は、その制作の動機が失われたプライドを取り戻すためのようでその心根が情けなく、好きではありませんが、日本の利点を改めて探すという意味ではいい情報を提供してくれているのかもしれません。
とにもかくにも、ちよっと貧乏になったからって誇りまで失わないで下さい、ということです。