シリアの混乱に乗じてイスラエルが緩衝地帯であったゴラン高原の実効支配を進めている。
※ゴラン高原とは戦略的にどういう位置にあるのかその一部をイスラエルが占領するに至った経緯や緩衝地帯の設置、それに付随する問題などは各自お調べ下さい。私もそれほど詳しいわけではないです。
これは当然、火事場泥棒とか力による支配地域の拡大である、つまりはロシアがウクライナでやっていることと同じである、などの批判を受けている。
ロシアを非難しながらイスラエルは支持する毎度のアメリカの二重規制も非難されるだろう。
しかし国際情勢をいくらかでも勉強した人には常識的なことであるが、ことはそういう平和な話ではない。
簡単に言ってしまうとロシアやウクライナがやっている事は、国家など、支配領域を持ち統治機構がある組織、機構にとっては極めて普通のことだということだ。
これは逆に言うと他のものたちが支配している領域には節度を持って接している、という状態のほうが普通ではない、ということになる。
というように国家というのは野蛮な方が普通なのではあるが、地域が安定して平和であるというのはその野蛮な国家にとっても利益になることでもある。
そうであるから野蛮な国家たちもお互いに平和共存が出来る道を探り合うということもある。
それが上手くいっている状態のことを一般に我々は文明社会が機能している、などと言う。
これらを総括してどう考えればいいのかというと、野蛮に見える国家も文明的に見える国家も実は同じであって、争いになるかならないかの違いは争いにならない、何からの要素があるだけだということだ。
その要素は色々あるだろう。
一つは強力か国家が全体を支配している状態だ。
一般にパクス・ロマーナ(古代ローマによる世界支配)パクス・アメリカーナ(冷戦終了から暫くの間続いたアメリカによる世界支配)などと呼ばれる時代がこれにあたる。極めて強力な一つの国家が、自国に都合のいい状態を維持するために他国の勝手な行動を許さない時代のことだ。
もう一つが各国の勢力が均衡している状態が続いている時代だ。
これは下手に喧嘩をすると自分も痛い目にあうのでお互いに牽制しつつ表面上は平和裡に過ごしている時代だ。
(これが地球全体の話ではなくもっと狭い範囲ならば同じ宗教、文化を持った勢力同士が平和に共存する、したこともあっただろう。例え婚姻関係を築いたりして。しかし西洋国家が行った大航海時代以降一国支配か勢力均衡以外の方法で平和が続いた例は無いのではないのか)
だから、本当に平和を欲するのならばロシアやイスラエルをただ非難するのではなく、国家同士が勝手な行動を取れない様な要素を造らなければならない。
それはアメリカの一国支配が終わりを向えている現在にあっては、新たな勢力の均衡が一番妥当な解決方法だろう。
本当はそんなことは生物であれば本能的に理解、判断して実行する筈なのだ。それがなされないのは人間が余計なイデオロギーを持ったからだろう。
この場合は根拠のない平和な平和主義がそれに当たるだろうか。
平和に必要なのは現実を現実的に観て、必要な手段を適切に打つことなのだが。