時事その他についての考察

伊藤貫氏が言及しないこと

最近、伊藤貫氏のYouTubeを観ることが多い。 

その主張することを一口に言うとアメリカの外交戦略の誤謬と日本の安全保障戦略における根本的な誤りを指摘することに尽きる。

※伊藤氏は勢力均衡外交を推奨しており、その立場から冷戦終了以降のアメリカが推進しているいわいるパクス・アメリカーナと世界各地でのアメリカの、人々を無意味に虐殺に追い込んでいる謀略を批判している。また、そういうアメリカに無批判に、しかも国益を損ない、更には国家の存続すら危うくしかねない追従をしている日本に対しては更に強い批判を浴びせている。 

これは伊藤氏に限らないことなのだが、日本政府を批判する人たちは日本は現実を直視してあるべき外交政策を取るべきだ、と主張する。

それは間違いではない。それどころか有用な提言だと思う。しかし彼らには一様にアメリカを敵視するという共通点がある。

それも無理からぬことだとは思う。なにしろアメリカは一面では日本をいいように扱い、自身の都合のいいように扱ってきた、という歴史があるのだから。

※彼らがアメリカの悪意を強調するのとは対照的に、アメリカを賛辞する人たちが戦後のアメリカの対日政策の内、日本の経済成長を助けた融和政策をもってアメリカを無批判に礼賛していることも興味深い。

しかし彼らの盲点になっていることがある。

それは、日本が取るべき政策はアメリカの国策にも適うはずであるということだ。

アメリカにとっての最大の脅威は中国だろう。

そうして、今のままでは日本はやがてアメリカの支配を離れて、中国の属国になる可能性まである。

そんな事になったら、アメリカは中国と太平洋を隔てて直接向き会わなければならないことになる。

日本と(当然ながら日本が中国の軍門に下っているということは台湾もそうなっているということなので)台湾という、太平洋に進出する際の邪魔者が無くなった中国とその同盟国たるロシアは、自由に太平洋に出入りできることになる。

このシナリオは、日本だけでなく、アメリカにとっても避けたいものである筈だ。

そうであるならば、現在、日本を無意味に虐げているアメリカの国策は、同時にアメリカの国益をも大きく損なっているということになる。

※どうして日本、アメリカ双方にそのような政策を進める人たちがいるのか。おそらく彼らは目先の自分の利益しか考えない人たちなのだろう。5年後、10年後やその先の自国や世界のことなどには興味はなく、自身の保身とケチな利益だけを考えているのだろう。それはある意味ではとても人間らしいとも言える。

日本が現在のようなアメリカの実質的には弱々しい植民地などではなく自立した強力で頼りになる本当の意味での同盟国になることは日本だけでなく、アメリカにとっても、もはや早急に実現されなければならないことであるはずだ。 

※アメリカの視点から見ると、日本を今までのように適当にお金を吸い上げられる便利な存在にしておくような贅沢は既に許されないということだ。対中国用に日本を整備しなければならないのである。

そうであるならば、日本のやるべきことはアメリカの対日政策を、本来あるべきものに転換させることだ。  

それには、まずはアメリカにまともな日本政策ができる有力者を増やすことだ。 

これまで縷々述べてきたように、それは日米双方に有益なことなので(※あまり有難くはないが、中国のおかげで)日本のまともな人たちがまともにアメリカのまともな人たちと接すれば必ずや実現できるはずなのだが。