時事その他についての考察

“岸田ショック”という言葉に惑わされてはいけない

私は、特に自民党を支持している者ではないが、当面岸田氏を支持する者ではある。しかし同時に、岸田政権は(またしても)一年足らずで終ることを予想する者でもある。

《初めに言っておく必要があるだろうと思うが私は特に政治に詳しいわけではない。だから知識不足や勘違いがあれば平に謝ります。―しかし、特にネットにおいて政治を語る者たちの自信に満ちた口振りは何であろうか。しかもほとんどの場合、断言はするが説明はしない―但し世間的な意見の一端を知るという意味においては役に立つ存在ではある―》

岸田ショックとは勿論、株価の暴落を指していっているものである。そうしてその流れとして岸田氏の能力も否定する意味合いもある。

岸田氏が株などの儲けに対する税率を上げることを示唆した。その結果として株価が大きく下がった。(勿論、値下がりの要因としては原油の値上がりなどもある。しかし他国の株価の推移と比較すると日本株の下がり具合は特別であり、岸田氏の発言がその大きな原因であることは確かだろう)

それに対する怒りの声は不利益を被った人たち、主に投資をしている人たちや企業から出ているものだろう。まあ、財産が目減りしているのだから仕方がない。

また、選挙前にそんなことを言って自党を窮地に追い込みかねない状況を作ったことに対して呆れる声もある。総理としての資質が無いのでは、という意見もある。

しかし、これは当たり前のことだが、ネットに書き込みをする人たちが思い付くことを総理やその側近が知らないわけはない。

これは別に能力のことを言っているのではない。それにかける労力と時間の話である。

政治家にとって、選挙は人生がかかっている出来事である。自らの言動が選挙にどう影響するのか、ましてや選挙の日程さえも自分で決めている人たちの周到に用意された発言が、その後の選挙にどう影響するのかを考えないわけはない。

まあ、ここまで大きく下がってしまうのは想定外だったかもしれないが、(既述のように国外において予測が出来なかったことが重なってしまった)ある程度の株の値下がりは覚悟していた筈だ。

それをいつやるにせよ、税率を上げたら株価は下がるに決まっている。選挙の後に白々しく持ち出すより、就任の御祝儀がある内に早々に打ち出したほうがダメージは少ないと思ったとしても不思議は無い。

また、それを選挙前には曖昧にしておいて、選挙後に実行に移して後から非難されるよりも、堂々と公約として披露したほうが後々の評価につながる、との思惑もあったのかもしれない。

とは言うものの、やはり政治勘は悪いようだ。

岸田氏が総裁選に立候補した後、菅氏が出馬しないという発表があった。

直後にその感想と対応を問われた時に、驚いている、ということと、対応は検討するという意味のことしか言えなかった。(しかも動揺は隠せなかった)

ここは威勢のいいことを言って盛り上げるチャンスだったのである。その時に人柄はおそらく誠実であるだろうということと、しかし政治的感性は鈍いだろうことを感じた。総理短命説をとなえるのはそのためである。(これは私が言っているだけで、結果としては総裁選には勝ったのだからその時の態度は正しかったのかもしれないが)

ところで、当たり前のことだが、どのような政策をとるべきかは意見の別れることだ。

そうして、結局のところ何が正しいのかということは終わってみなければわからない。

安倍菅両政権が追求していた政策は、日経平均株価の上昇や輸出企業の業績の改善など、確かに一定の成果を上げることはできた。

しかし、目標としていた経済成長率には到底届かず、また二年で達成すると断言していたインフレ目標などは全く道筋さえ見つけられない。(勿論、インフレ目標は日銀総裁の発言だが実質、首相のものと同じと考えていいだろう)

それに対して、格差の拡大に代表される、社会の矛盾を是正する課題はほとんど進んでいない。(ここは本当は客観的なデータを入れなければいけないところ。しかしそんなものは手元にないので、ただの印象論になる危険は承知の上で続けさせてもらう)

ただ、犯罪件数、特に凶悪犯罪の件数が減っているという話も聞く。その他にも我々の日常に関係することでも成果の上がっていることはあるのかもしれない。しかし、全体を考えると、今までの路線をこれ以上続けてはいけないという結論にならざるを得ない。すなわち、少なくとも当面は安倍菅路線からの転換を訴える岸田氏を支持するということになる。

《こういう考え方は日和見だとか責任逃れだという非難を受けやすい。しかし少なくとも、間違っているかもしれないことを断言するよりは正しい態度のはずだ。我々は歴史を通じて教祖的な人物や主張は危険であると学んだと思うのだが)

話は少し変わるのだが、岸田氏の政策は立憲民主党の政策に似ているのだろう。

そうであるならば、立憲民主党は党の違いを越えて岸田氏を支持しなければならないはずだ。(一説では岸田氏が立憲の政策を借用したという人もいるらしい)

たとえ敵対する政党であっても、自分の主張していることを主張するものを支持しないのは理屈が合わない。

自民党のなかでも敵対勢力と争わなければならないだろう岸田氏を党外から援護することを期待したい。(しないだろうが。しかし突飛なことをいうようだが、そのような協力関係ができあがれば、自民党の右派と左派が分裂して左派と立憲が新党を作るというシナリオも全くあり得ないわけではない)

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