人との関わりで、屈辱的なこと、ひどいことをいわれたのに、何もいえず、言い返せず、ただ無視をしたり、ひどいときには愛想笑いでごまかしたりしたことは、多くの人が経験していることでしょう。
そうして、後になって、“腸が煮えくり返る”という表現を使いたくなるような思いにかられてしまうのです。「あの時に、ああ言い返せればよかったのに・・」などと思い返すこともあります。
でも、言い返せなくていいのです。大体、ほとんどの人にはその場で上手いこと言い返す、などということは出来ないことです。
それが出来る人というのは、いわいる、頭の回転がはやい、ということもありますが、「常に臨戦態勢」なのです。気を張っているのです。
じゃあ、ぼくも、わたしも、いつも気を張っていよう、と思っても、あなたに屈辱を与える相手は、あなたが少し、気を抜いた瞬間に攻撃してくるので、それは無駄な努力というものです。
つまり、「格好よく言い返す」などというのは、普通の人には無理なことなのです。
ですから、そういう悔しい思いをしているのは自分だけじゃあない、どころか、ほとんどの人がそういう経験をしている、と思えば、少しは気も楽になりませんか。少しは、ですが。
さらにいえば、相手にそんなことを言う人、というのは、精神的に貧しい人だ、ということです。その場では勝ち誇って、勝った人のように見えるでしょうが、それは錯覚です。何か知りませんが、気持ち悪い闇を抱えているはずです。そう思えば、さらに少しは楽になりませんか。少しは、ですが。
さて、ここまでは昭和風の説教です。「何を抜かしてけつかる」と、やはり昭和風に思った人もいたことでしょう。
もしも、何か、反撃をしたいのならば、大切なのはタイミングです。いや、今あなたの思ったのは逆です。タイミングをはかる、のではなく、“タイミングを気にしない”のです。
どうせ、今度同じことがあったら、こう言い返そう、とか思っているのでしょう。そんなタイミングは来ません。もし来ても、またうっかりしてしまうだけです。
重要なのは、あなたの思いを伝えることなのです。条件としては、冷静に伝える、ということぐらいでしょうか。
実は、相手には、それほどの悪意はないこともあります。素直に反省してくれて解決することもあるかもしれません。
そうではなく、初めから攻撃するつもりでひどいことをいっていたことも当然、あるでしょう。
そういう人も、誰彼かまわずに攻撃するわけでは勿論、ありません。攻撃できる相手、すなわち、彼から見て弱く見える相手を選んでいるわけです。
肉食動物も草食動物の群れを攻撃するときには、群れのなかから弱い相手を選んで攻撃します。“最小の労力で最大の効果を狙う”これは鉄則です。
ですから、そのターゲットから外れるには、“攻撃すると危険かも知れない相手”と思わせればいいわけです。
それには、“こちらは攻撃されて平気なわけではない”ということを伝えればおおかたの場合は十分です。
もしもそれで済まない相手ならば、それは危険かもしれません。個別の対応が必要かもしれず、この場での助言はできかねます。