時事その他についての考察

読者を騙しているという意味では一番たちが悪いのはあなた達では?

えー、読者におもねる文章がありますね。いわく、我々大衆は頑張っているのに、政治が駄目だから世の中が良くならない、とか。または、国の借金をまともな割合にするには累進課税を強めてお金持ちからもっと税金をとればいいだけ、などなど。

こういうのは、なんですね、洋服屋で似合いもしない服を着させて、「いやぁ、お似合いですねぇ」と言っているのと同じですね。つまり、世辞ということです。売文も商売である以上、そういうこともしなければいけません。仮に書いている本人の本意ではなくとも、読者の喜ぶ文言でなければ出版社が買ってくれませんので仕方ありません。出版社からの依頼にこたえてそういう趣旨のものを書くこともあるのでしょう。因果な商売です。因果といえば、どんな商売も、因果なものです。

しかし、読んでいるほうがそれでいい気になってはいけません。初めにあげた例でいうと、政治がもし駄目なのならばそれは政治家ではなく、国民の責任に決まってます。自分達の代表なのですから。人のせいにしてはいけません。二つ目の話でいうと、こういう主張をするならば、まずは数字を示さなければいけません。実際に論者が妥当だと判断する税制を 示し、例えばそれを 2019年の実績に当て嵌めた場合にどうなるのか。今、よく言われるエビデンス(証拠、証明)ってやつですね。わたしの聞いた話だとお金持ち苛めの税制では全然、足りないそうです。(具体策な数字が出せなくて申し訳ないのですが)結局、商売でも税金でも広く、薄くっていうのがコツみたいですね。お金持ちからガバッととっても、なにしろ、お金持ちは数が少ないので、国家予算レベルの莫大な金額になると、それで間に合うというわけにはいかないらしいので。

“日本を代表する知性”とか、場合によっては“知の巨人”などという惹句を使われる人(知の巨人って、カール・マルクス?それとも、クロード・レヴィ・ストロース?考え方の枠組みそのものを変えたぐらいの人でないと、―パラダイム・シフトとかいうやつですね―そう呼ばれる存在では無いと思いますが)でも、そういう文章を書いたりするので、(その人が実際に鋭い知性を持っていることは否定する気はないのですが)暗澹たる気持ちにもなるのです。投資にでも失敗して、お金がいるのかしら。

としかし、こんな文章を誰が読みたがるというのでしょう。自分たちを攻撃する文章を。そもそも消費者の歓心を買わないものは売り物になりえません。ですので、読者におもねる文章が横行するのもせんないことなのでしょう。本当は、読者側がそろそろ気がついてくれてもいいような気がするのですが。楽しむために読む文章は小説などを読めばいいはずです。自らの知見を広めるために読むものならば、自分の固定観念を壊してくれるぐらいの、そうしてそうであるならば、その攻撃は、必然的に自分にも向けられるものであるはずで、そういうものでなければ読む意味も少ないと思いますが。

まあ、しかし、そんなことを考える人間のほうが世間的にみれば変り者なのでしょう。なかなか便利なレッテルです、“変り者”というのは。あからさまに攻撃しているわけでも、排除しているわけでもありません。しかし、はっきりと、その人に関することは考えなくていい人、という分野に嵌め込むわけです。一丁上がりです。あれ、一丁上げられちゃった。

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