結局は力が物を言うということだろう。力がない者はある者を止める事はできない。力のないガザ地区は強力なイスラエルの攻撃を止めることはできない。これはウクライナとロシアの間の争いにも言えることだ。
そうなると頼みは他国の圧力ということになる。
他国といっても、実質的にそれができるのはアメリカだけだ。利害関係の強いアラブ諸国が介入したら中東戦争が起きてしまうかもしれない。ヨーロッパはアメリカに逆らって介入することはできない。
アメリカが二枚舌と言われながらも常にイスラエルを支持するのかについてよく言われることは、力のあるユダヤ系の人たちのロビー活動があるというものだ。
勿論その通りではあるのだろう。しかし、その説明では、アメリカ政府は自らの意志に反してイスラエルを支持しているように取れる。
しかし、実際は違うのかもしれない。
ここからの説明は、私の独創ではなく、「100年予測」の著者である、ジョージ・フリードマンの受売りになる。
フリードマンによると、アメリカの世界戦略の根本にあるのは世界の秩序を保つことにあるのでなく、自国に対抗することのできる国を生まれさせないことにある。
そのために有効なことは、アメリカ以外の国々が常に争っている状態を保つことだ。
他国が争い、国力を消耗していれば、アメリカに対抗できるように国力を伸ばすことはできない。
フリードマンは具体的な例を上げているのだが、アメリカがアフガニスタンとイラクで行った作戦は、一般的には失敗だと捉えられている。
しかし、中東を混乱したままに留め、地域大国を生まれさせない、というアメリカの第一義の目的から見ると、これは成功した作戦だといえる。
これをイスラエルに応用して考えると、イスラエルの存在は、中東が決して一つにはならないという意味において、アラブに楔が打たれているという意味においてアメリカにとって戦略的に重要だということがわかる。
また、アラブ諸国の敵意をアメリカにではなく、イスラエルに向かわせることができるという点でも重要だろう。
この考えに納得がいかなければ、かつてイギリスが大陸ヨーロッパに対してとっていた戦略を思い出してみるといい。
イギリスの根本的な戦略は、ヨーロッパに巨大な勢力を生まれさせない、というものだった。
だから、フランスが強くなってきたらドイツやロシアに加担し、ドイツが力をつけてきたらフランスと同盟を結ぶ。
そこに礼節や人道などというものはない。
ただ、自国の利益のため、という行動原則があるだけだ。
それはせいぜい19世紀までの話だろう、というのは間違っている。
確かに時代が下るに従って、ヒューマニズムというものは発展してきた。刑罰においていつの時代でも、どこの国でも一般的であった死刑でさえ多くの国で廃止されている。
しかし、その発展はまだ、国益に反することが起きたときに人道を優先させるところまでは来ていない。
端的に言うと、イスラエルは勿論、アメリカも自分たちのやっていることを充分に自覚を持って、その正しさを確信して行っている。
これを覆すに人道的な訴えはほぼ無意味だ。
もしも方針を変えなければ、それぞれの国が重大な不利益を被ることを証明するか、実際に不利益を受けさせるしかない。