《結局、お金というものは、ヒトの欲望を実現させるための道具なのではないか。欲望が巨大化するごとにお金の絶対量は増え続ける。何故なら欲望を実現させるためには流通(取引)を巨大化させなければならないからだ。流通の肝、原動力はお金であるので、お金は増え続ける、また、増え続けなければならない》
こう思った直接のきっかけは、MMTの入門書を読んだことだった。
それまでMMTについては、有名な、通貨発行権を持つ国は、その財政の赤字に関わらず、インフレが起きない限り通貨を発行することができる、という命題を知っているくらいだった。
それは間違ってはいないのであるが、その他、簡単で重要であるにも関わらず、あまり知られていないことがあった。
そもそもMMTが成立するのは、諸国家が金本位制から離脱したこと、更に、各国通貨が変動相場制に移行したことが前提である。つまりは、いわいるニクソンショックとその後の変動相場制への移行がなければMMTそのものがなかったことになる。
統治者がお金に困って、貨幣の中の金の含有量を減らして量を水増しする、というは、古代ローマや江戸時代の日本などで行われた。
それは、当然の帰結としてインフレを呼ぶことになったわけだが、それら昔の国家の貨幣形態にはMMTは当てはまらないことになる。
更には、これはユーロ圏内にあるEU加盟諸国には当てはまらない。
また、一部の国で見られるように、自国通貨を米ドルと固定化してしまっていてもMMTを採用することはできない。
結果として、MMTが成り立つのは、アメリカや日本、イギリスなど、限られた国家(せいぜい10カ国くらいか)
また、どうもそもそもの提唱者は、投資家であって、経済学者ではないようだ。
つまりは、あくまでも実利者が実際の経験から導き出した理論らしい。
学者がその研究から出した理論と、現場の人間が経験から割り出した理論のどちらがより信頼できるか、というのは人によって考え方が違うだろう。
少なくとも、私は現場の肌感覚の方が信頼できると考える者だ。
(更に言うと、MMTは、実は、とっくに証明されている、という言い方もできなくはない。そうでなければ、長年、巨額な財政赤字と貿易赤字を出し続けているアメリカが破綻しないのも、現在、国家予算の割合ではアメリカよりも大きな財政赤字を持つ日本にインフレが起きていないのはおかしな話になる)
(だから、実は、アメリカのFRBも、日本の財務省も既にMMTに則って、これを実践している、とも考えられる。そうでなければ現在の財政状況はおかしいのだ)
MMの入門書を読んで、これは、結構信憑性があるのではないか、と思いはじめた。
もしも、MMTが正しいとすれば、それは金本位制からの離脱以来の金融上の変化、革命と言えるのではないか。
(よく知られているように、金本位制からの離脱を巡っては大きな混乱が起きた。金本位制から離脱できることが信じられずに、これを維持することに固執した国々は当時の大不況から回復することができなかった。MMTの有効性を信じずに、あくまでも財政赤字の改善を命題とし続ける国は、それと同じ目にあうのかもしれない)
人間は、お金を増やすやり方を次々と開発してきた。
利子を発明し、株を発明し、金本位制も廃止した。
その最新版がMMTの主張している現実なのかもしれない。
結局、お金とは人間の欲望が具現化したものなのではないだろうか。
そもそも、欲望がお金を生んだ。
そうして、欲望には限りはなく、欲望を支える道具としてのお金も限りなくその流通量を増やす。それを増やすために、ヒトは次々と新たなカラクリを開発する。
もしも、そこに誤謬があっても、それは全人類が望んでいることであるので、我々はその間違いに気付くことはできない。そうして、我々がお金の存在を信じている限り、例えそれが幻のようなものであっても、お金はその価値を無くすことはない。