物語の楽しさの多くは、「この後どうなるんだろう」というワクワク感に依っている。
だから、ドラマやマンガの最終回が今一つと感じられることが多くなる。
また、最後に、物語が終わった後は主人公たちはどうなるのだろう、と余韻を残させる技が使われることもある。
そうなると、物語を愉しむ方法として、結末は観ない、読まない、というやり方もある。
したがって、未完の作品の続きを熱望する、あまつさえ、完結させない作者を貶めるなどということは物語の愉しみ方を知らない者達のやることだということになる。(気持ちはわかるけど)
実は、この辺りのことを作品として表現している小説がある。
筒井康隆の「驚愕の荒野」である。
筒井康隆の作品の少なくとも一部は、読みやすく面白く、かつ表現の方法論において奥深いことをしているが、この作品もその一つである。
先に、最終回云々を表現したということを言ったが、おそらく作者の意図はそこにはなく、それよりも「語られてしまうと一つに決まってしまう物語の、本来持っている多様性」を表現したかったのだと思う。
(何いってんだ、と思われることと察するが、作品を読めば何をいってるのかはすぐわかります)
その意図が期せずして最終回云々問題まで網羅してしまうというのも優れた作品たるゆえんであろう。