時事その他についての考察

狂ってしまったかにも見える中国の暴走は何をもたらすか

《初めに言っておかなければならないのは、我々日本人が持つことのできる情報は、こと中国に対しては公平ではないだろうということだ。中国にもあるに決まっている美点に我々が気付くのは難しい。あらかじめ、この小文にもそういう偏見が入っているものとして受け取られたい》

【その一】我々から見ると、暴走の限りをつくそうとしか見えない中国。彼らは一体何をしたいのか。世界の覇権を握りたいのか。世界中を中国的政権にしたいのか。

多分、大した構想はないのではないか。彼らにあるのは、ただアメリカをやっつけて覇権を握りたい、ということだけで、その後の展開に対する計画は曖昧なのではないだろうか。

何故そう思うのか。仮に彼らの希望通りに中国が軍事、経済などなど全ての分野で圧倒的な立場に立てたとしよう。世界中の国々が中国の言いなりになる世界が実現したとしよう。そうなれば当然、中国としては、各国の政体も中国にならったものにさせようとするだろう。しかし、これはそう、上手くはいかない。それは香港の事例を見ればわかることだ。一度民主主義を経験した人々は簡単には自由を手放すことはない。国家がそれを強要すれば、社会は混乱することになる。もともと民主主義を知らない中国本土の国民を治めるのとは訳が違うのだ。

現在の中国上層部がそこまで考えているとは、または仮に考えていたとしても、その解決策を持っているとは思えない。

【その二】先日(12/4)中国当局が自国は立派な民主国家であると言ったという。

どうも、近々アメリカが民主国家を集めてその結束を強める会議だかを開くとかで、それに対抗してのことらしい。

どんなに専制的な国家でも、自国のことを民主的であるといいたがる。そもそも民主国家というものの定義も曖昧なのだろう。北朝鮮だって正式名称は朝鮮民主主義人民共和国だ。しかし中国がいつ民主国家になったというのだろう。これは嫌味などではなく、資本主義のやり方をとりいれたといえども、一応は共産主義の看板を上げているのではなかったのか。習近平が儀長(だったか)を務めているのは共産党ではなかったのか。滅茶苦茶である。

その12/4日の中国の会見のなかで、アメリカの人種差別にも言及し、アメリカこそ非民主国家だとも訴えていた。

その訴えにも聴くべき所はある。しかし重要なのは、やっていることが結果として非民主的であったとしても、それが公平な選挙で選ばれた権力の元でなされているかどうかということだ。

だからこそ、トランプ前大統領が行ったといわれる選挙妨害が民主主義にとって極めて危険な行為だったのだ。

つまり、民主国家と専制国家を分ける目安としては、公正な選挙というものが大変に重要なものだということだ。

【その三】台湾情勢

《太平洋戦争が終わり、日本軍が中国大陸から引き揚げた後、大陸の二つの勢力、すなわち、中華民国と中華人民共和国の間の内戦が再発した。それに敗れた中華民国は台湾に逃れ、公式にはそこを反攻拠点として大陸征服を目標とすることとなった。それ以降、大陸側台湾側双方共に相手方を独立国家としては認めておらず、いずれは自分が相手を打ち負かして中国を統一することが国是となっている》

外国から見ると相手を征服して中国の再統一を目指しているのは中華人民共和国(中共)だけだと思ってしまうかもしれないが、中華民国(台湾)も同じことをいっているはずである。ただ、現在の現実的な力関係から見て台湾が大陸を征服することはかなり難しいので目立たないだけだ。

これは、いわいる「一つの中国」と言われる話だ。中共、台湾ともに「一つの中国」を提唱きていることでは同じだ。いづれ、自国が相手国を征服すると言っていることでは同じなのだ。

外から見れば、中共も、台湾も独立国家に他ならない。だから普通に考えれば、双方共に独立国家として認め合うことが最善の解決策に見える。

しかし勿論そう簡単にはいかない。そうなるためには、台湾が「一つの中国」論を放棄して、台湾が一つの独立した国家であることを宣言しなければならない。だが、今それをやると中台関係は一気に緊急事態になる可能性が極めて高い。中共がそれを見過ごすはずはないのだ。それを口実に戦争になる恐れも高い。

台湾は時期を見誤ったと言わざるを得ない。少なくとも、ニクソンの訪中あたりでそうしていれば、中共にまだ力がない時にその決断ができていれば、もしかしたら独立できていたかもしれなかったのだが。

《ところで、もしも中国が台湾を併合したら、強力な独立運動を内部に取り込むことになる。イギリスがIRAに散々苦しめられたように、中国本土でのテロが頻発する可能性もある。今のところ反乱に対しては力で押さえつける以外の方法論がないように見える中共政府にそれに対処する手腕はあるだろうか》

ところで、中共が台湾にこだわる理由はどこにあるか。

一般的にはそもそも一つの中国を掲げているからだとか、台湾の経済が欲しいだとか、どうしても太平洋への出口が欲しいからだなどと言われるだろう。

あまり語られることがないので、おそらく盲点になっいるだろうことだが、太平洋への出口が欲しいというのは、攻撃的な意図があるからというよりも、恐怖心からそれを求めるのだと思う。

なんといっても、日本列島は北はロシアの領土に対面している所から、南西諸島を含めるとほとんど台湾まで到達して、台湾の先にはフィリピン列島がある。中国の海岸線は仮想敵国に囲まれているのだ。これに圧迫感や恐怖を感じないほうが不思議だろう。

もしも台湾を独立させたいのならば、現実を無視して、夢物語を語るなれば、中国の恐怖を宥めることができるのは日本をおいてない。日本が中国と近しい関係になることが出来れば、海岸線が全て圧迫されていることからくる恐怖心は取り除くことが出来るからだ。

いずれにしろ、米中対立のなかで、日本の選択、決断は決定的ともいえる影響力を持っていることは間違いない。日本にはその責務に耐えられる政府が存在しないし、しばらくは現れそうにないことは世界にとって極めて不幸なことになってしまうかもしれない。

日本が忘れてはいけないのは、もしも米中戦争が起きてしまったら、日本はその最前線になってしまうことだ。アメリカはまたも後方に控える幸運を得る。

結果としてどちらが勝つにしろ、日本列島はまたしても焦土となるだろう。

よく言われていることだが、我々は世界大戦前の状況にいるといっていい。

そうして、世界は第一次、第二次大戦はいかにしたら防げたのか、という課題に散々向き合ってきたはずだ。

米ソ対立ではなんとか上手くこなすことができた。そうして、またしても、その課題にいかに取り組んできたのかの真価が問わるときがきている。

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