時事その他についての考察

名作になるだろう「虎に翼」での見過ごせない情報操作

大きな話題と感動を呼んだ直言裁判の決着からの、寅子が法の真髄を掴む場面。

寅子は、法とは冒してはならない綺麗な水源のようなもので、法律家は、それを守らなくてはならない存在だ、といった意味のことを言う。

これは、丁度憲法記念日での放送であったこともあり、旧Twitter上では多く称賛が与えられた。

つまり、現在の改憲(改悪)勢力へのカウンターパンチである、という称賛である。 

しかしこれはやってはいけない情報操作であり、名作になるであろう作品を汚すものである。

(あらかじめ言う必要があるだろうが、寅子の認識そのものが間違っているわけではない。問題は寅子の言葉をあえて曖昧にさせて、現在の改憲論議を批判しているようにミスリードさせたことだ)

そもそも寅子が法律家になることを志したのは、当時の法に対する怒りからであった。 

その法はなんら変わっていないのに、法とは守らなくてはならない綺麗な水源、というのは明らかにおかしい。

しかし、実は寅子の言葉の本質は既にドラマのなかで提出されている。

寅子が女子部に入って間もなく、夫婦間の裁判を傍聴することがあった。

離婚裁判中の妻が、本来私物であるはずの着物を夫から取り返そうと訴えた裁判であった。

当時の法律では、婚姻中の妻の私物は全て夫の管理下にある、とされていたので裁判の見通しは暗いと思われていた。

しかし、結果としては妻は勝訴。そして、その判決理由として、当該する法の条文が定められたのは、妻の財産を他人から守るためであったはず。それを考えないで、字面通りに妻の財産をすでに離婚調停に入っている夫のものだとするのは、当該法が本来持っていた趣旨に反する、というものであった。

つまりは、寅子が守らなければならないのは、現行法などではなく、法の本質であり、法が本来目指すべきものであるはずなのだ。

そうして、そのためには、法は常に改正し続けなければならない。

現行法をそのまま守るなどというのは、法を不可侵にしてしまうことであり、それが生む悲劇は聖書やコーランを侵すべからざるものとしてしまっている一部の宗教が陥っている間違いを愚かにくり返すものだ。

寅子の発言の真意はその表面上の字面から単純に考えられるものではなく、以上説明したことであると私は考える。あの場面での寅子は単に説明下手だったと考える。

しかし、そこには明らかに現在とリンクさせるようにミスリードした制作者の意図も感じる。

それは、エセリベラルのやることであり、許してはならない。

作品は名作であり、今後も見続けるつもりだが、個人的には制作者たちへの信頼はかなり低くなった。

※この書き方だとおそらく誤解されてしまうだろう。私は基本的には今、リベラル派が訴えている自民党の各種法改正への反対運動には賛成です。ただ、言いたいのは各種法律や憲法は守ればいいというものではない、ということです。

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