大スターの話である。
トーク番組に出演したのだが、直前に海外ロケがあったのでそこでのお土産を持ってきたのだという。
そのお土産を持ってくることになったきっかけというか、理由が、番組のADに頼まれたからなのだという。
何でも前にも一度その番組にお土産を持ってきたことがあるそうなのだが、大スター自らあだ名をつけるくらい気安く話かけてくるADが(しかし決して親しいというわけではない。ずけずけと物を言ってくるタイプだということらしい。あだ名というのはその図々しさに少し驚いて内心でつけたもののようである)
「〇〇さん、番組収録前に××にロケで行くそうじゃないですかぁ。したら又番組にお土産いいっスかっ?」
と言ってきたそうである。そうして、
「ああ~スタッフさんたちに代わりに頼んじゃ駄目っスよ。そうだ、証拠の写真も撮ってきてもらっていいっスか?」
とも言われたそうである。それで、少し釈然としない気もしたが、言われた通り土産も買ってきたし、写真も自撮りで撮ってきた、と言ってお土産を出し、証拠写真も何枚か紹介したのであった。
当然、全ては嘘であろう。
大スターにそんなことを言うアシスタント・ディレクターがいるはずもないし、自撮りと言っていた写真は何を勘違いしたのか、明らかに他人が撮ったものであった。
『それがたとえ一介のADからの頼みごとであっても(気が進まないまでも)やってあげる、大スターでありながら気さくな人』を演出したのだろう。本人が考えたことであるのかは知らない。番組の演出に乗ったということなのかも知れない。
いずれにしろ、その演出に、何のてらいもなく、堂々と乗ることが出来るのである。
これが大スターというものなのである。こうでなくてはいけないのである。
自らのイメージを維持することならば、我々凡人ならば躊躇してしまうようなことでもためらいもなく出来る。
スター、特に大スターというものはこうでなくてはいけない、と大変に感心した出来事でした。