「となりのシムラ」というのはNHK で不定期に放送されていた志村けん主演のコント番組です。タイトルが示唆しているように各コントで志村さんは市井の中年男を演じられています。つまり、志村けんを志村けんたらしめた数々のキャラクターは全て封印しているわけです。
このシリーズは全部で6回あったようですが先を日(4月4日)その中の第5回が再放送されました。実はわたくしは、おそらく第1回だろう回の本放送は観ていたのですが、失礼ながらその時にはあまり面白く感じませんでした。
それが今回、矢鱈に面白かったのは、こちらの気持ちが違っていたのか、出来のいい回とそうでもなかった回の違いということなのかわかりませんが。
いずれにせよ、それぞれのコントに斬新さは全くありません。よくあるシチュエーションでよくある展開をして、落ちにも意外性は全く、ありません。それでも面白いというところに志村けんの凄みがあるといえます。こんなことが出来るのはあとは伊東四朗さんぐらいではないでしょうか。 極端なキャラクターや新しいアイディアを排除したあとに残るものとは“間”と“顔芸”と“動き”のようです。顔芸といってもこの場合はちょっとした表情のことです。コントは基本的にはいわいるつっこみがないので表情で笑いどころを強調するのでしょう。コント、というよりも、コメディの基本にして究極なのが間と顔芸と細かい動作(舞台の場合は動きが大きくなります)なのでしょう。
思えばザ・ドリフターズもそうであった気がします。(特に加藤さんは動きも含めて王道のような気がします)そう思うと、あらためて、志村けんというのはザ・ドリフターズの一員であったのだなぁ、と府に落ちるというものです。
ところで、このコントシリーズを初めて観たときに驚いたのは本式のセットです。ドラマと同じ出来ばえなんですから。コントのセットといえば安そうな簡易的なものであるというイメージが染み付いていましたので。
志村さんも驚き、またやる気もわいたのではないでしょうか。さすがはNHKという感じでした。
相変わらず若い美人を侍らすのはご愛敬ですが、(ご本人のやる気も違うでしょうし、観る方も楽しいですし)今回は本式の女優でそれをやっていたのもさすがN.でした。(民放でやるときの人たちだって面白いんですけど。個人的には磯山さやかさんが贔屓です)
女優さんたちが上手なのは皆さん一流の方々なので当たり前かもしれませんが、(岸本加代子さんとか上手いに決まってます)元フジテレビのアナウンサーであった八木亜矢子さんが達者なのはなんなんでしょう。昔、ドリフのコントによく出てらした由紀さおりさんを思い出してしまいました。
志村さんは勿論まだまだ活躍される方だったので早すぎることは早すぎたのですが、これ以上ないくらいのいい人生を送られた方だと思います。ただ、これだけのキャリアをお持ちになっていて、初めての主演映画が決まっていた、ということらしいので、それが出来なくなってしまったのはさぞや無念だっただろうとお気の毒に思います。
このタイミングでこんなことになるというのは残念というよりも残酷なことです。